寝耳に水
寝耳に水
夜中に目が覚めた。
ひゃ、と声を上げそうになったがその音はのど仏辺りでひっかかったようで、出てこなかった。代わりにゲッとガマガエルの様な声が飛び出した。
耳が冷たい。いや、耳の中が冷たい。ひやりとした何かが、とろりと耳の奧へと入ってくる。私はそれがきんきんに冷えた水だと理解するのに数秒を要した。
両耳を塞ごうとしたが腕が動かない。それどころか全身が動かない。
目を開けようとする。
「あ、だめですよ開けちゃ」
甲高い声が耳の中でする。開こうとしていた目蓋が吸い寄せられるように閉じる。
「あなたに寝耳に水な知らせを持って参りました」
お前は誰だ。というか何なんだ。
「どうも、寝耳の水です」
そいつがしゃべる度に、耳の中でチャプチャプと水音がする。
「あなたは明日の朝死にます」
え。と言いそうになるがまたしても声はのど仏で止まる。
「死にたくなければ、明日の朝枕元に置いてある水を飲みなさい」
翌朝、目を覚まし枕元を見るとそいつの言う通り、水が一杯置いてあった。恐る恐る飲む。そこで俺の視界は真っ暗になった。
再び目を覚まし、立ち上がると俺の口は勝手に動いてこう言った。
「ふははは、まんまと騙されやがったな、寄生大成功・・・」
(五〇〇字)